縁あって高井戸に来て、かつて好きだった店に似た店を探し回ったが見つからなかった。探しまわったのは高井戸・浜田山そして富士見ヶ丘の辺りまで足を伸ばして３年ぐらい探してみたがピンとこない...。 それならとBAR きままを自分で作ってしまった。 どうせ作るならと己の好きな酒を好きな雰囲気の中で好きな曲につつまれながら酔いしれたいと作った。

くだらない話だが店名決定を迷った。
「BAR　きまま」なのか「バー　きまま」なのか「バー　キママ」なのか迷ったが友人に聞いたら「BAR　きまま」がいいと言われた。「漢字で気儘きままは固いし、外国人はカタカナ読めないし、くつろげるならひらがなが良いよ！古くから女性の文字のひらがながいいんじゃない？」と言われ、珍しくこだわらずに店名を決めた。

これがBARと言えるのか少々疑問かもしれない。しかし拘りこだわりは詰め込んだと思う。

カウンターも席数は少ないが一応ある。好きな曲は良い音で聞きたい、ならば開店前30分前から温めた真空管アンプ（暖機運転しないと壊れるんです）で大きなスピーカーで鳴らしたい。そしてそれはソファーでリラックスして聞きたい。狭い客室にその我儘わがままをすべて詰め込んだ。これが受け入れられるものかは分からないが、こんな私のこだわりの空間と私セレクトのお酒を味わってもらえたらうれしい。

酒が飲めずに仕事上の接待で苦しんだ二十代、特にウイスキーが苦手だった。 隣国(K国)の人と飲むと、かつての戒厳令かいげんれいの名残りか一気飲みが基本だった。（外出禁止前に酔うため）これには閉口しました そんな酒に苦しんだ自分だったが、出張先の香港で香港の友人と飲んだ際に教えてもらったのがブランデーの水割りだった。こんな旨いものが有るのかと思ったのが酒に目覚めた時だ。この酒の名はコルドンブルー。当時日本の酒屋で一本5万円もしたのだから美味いはずだ。その酒はいまでも愛飲しているし、店にも置いている。

ご覧いただいている方、ブランデーを飲まされるかと心配してる？最近はウイスキーにも嵌はまっているので大丈夫。

ウイスキーにも思い出はある。

二十代前半で就職の入社面接が札幌プリンスホテルのバーで行われた。 面接してくださった部長さんが席に着くとお店の方がシーバスリーガルのボトルをワゴンに載せて厳かおごそかに運んできた。私はジュースを飲んだが、これがシーバスリーガルとの出会いだ。今でこそシーバスリーガルは普通に飲めるが当時は高かったと思う、いつしかこれを飲める人になりたいと思った。そしてこのシーバスリーガルを一杯500円で提供している。

酒の思い出は尽きない。昔、横浜桜木町の馬車道のクラブでお酒の嗜みたしなみ方を教わった。
「うまい酒はさらに熟成させた方が旨い。」
その教えを守りつつ、安く飲んで貰いたいので高い酒は古酒を使っている。そんな爺の昔話に付き合ってもらえたらうれしい。

そんな私は昼間も普通に働いている。確実に開店するのは水曜と金曜の深夜だが、それ以外でも４階の窓に看板がかかればやっているので覗いてみてほしい。

高井戸駅をでて、目の前の歩道橋を渡り環八沿いの歩道を西荻方向に歩くと数分で広告幕だらけの特徴的なビルが現れる。
ビル名はRTOP高井戸駅前ビルと言う。

入口は環八沿いに有るが、入り口は小さくわかりずらい上に、ビル入り口にもビル名は無い。 下から４階を見やるとBAR きままの看板が窓口に灯っているのが見える。これがBAR きままへのアクセス方法だ。

高井戸駅で歩道橋を渡らず、そのまま西荻窪方向に歩いて、高井戸小学校、スーパーオオゼキ、そしてセブンイレブン手前で環八を渡ってくる事もできる。その方が看板は見つけやすいかもしれない。

それにしても特徴的である。広告幕に囲まれてと思う方もいると思うが、実はこの幕がいい感じを出してくれる。夜になると広告の文字が消えて、この幕越しに環八を走る車のテールランプの灯りが美しく、何んとも心を和ませてくれる。この嫋たおやかな灯りを肴に飲む酒は美味い。